先日、梅野記念絵画館で開催中の『風の孤独 四竃公子展』を見てきました。フィリア美術館の所蔵品も数点出品しています。
わたしがお邪魔した5月22日は、四竃公子さん*1と大倉宏さん*2によるギャラリートークが開催され、四竃さんの生い立ちもふくめ、絵を描くことのはじまり(本格的に絵筆をとったのは30歳代後半のことですが、四竃さんの内側には自分が描くべき「絵」があり続けたのです・・・)など、貴重なお話しをうかがうことができました。
四竃公子画集、図録、ちらし
四竃公子さんの描くモチーフは、枯れた花(いわゆるドライフラワーではありません)や、時を逸した果物、荒れ果てた大地などなど。なかでも今回の展示は、風景に焦点があてられていました。
ものが枯れるといったことは、当たり前の、日々ありきたりのことです。わたしは台所周辺でよく見慣れています(笑)。
しかし、大抵じっと見たりはしません。
まして絵になるとは思っていない。心をひらいていません。
しかし、四竃さんはそうしたものに出会ったとき、ちゃんと心がはたらいて一瞬にして自分の内側に何かを深く刻むのです。そしてその何かを時間をかけて油絵に仕上げる・・・。
なんだか、
四竃さんによって絵になってあらわれたそれらを、わたしも知っていると思うのでした。横着な言い様ですが。
こうしている今も刻々と生きて老いていくのだと自覚するは淋しいけれど、四竃さんの絵の中のひまわりや古代梨のようにきれいに風化していけたら・・・と、ちょっと背筋が伸びたような凛とした気持ちになります。
駐車場から木漏れ日の中を少し歩きました
梅野記念絵画館は、長野県東御市(とうみし)の浅間山を望む一帯にある芸術むら公園の中にあります。宿泊施設や温泉、登り窯もあるそうですよ。広々とした芝生や木々に囲まれ、おおきな池の畔に建っています。
芝生でくつろぐカモたち
主なコレクションは青木繁をはじめ、近代日本洋画を中心としています。ホームページを拝見すると特別展、ワークショップなどもいろいろ企画されているようですね。
四竃さんの深い色あい、ぜひ間近にご覧ください。
*1 四竃公子(しかまきみこ)
1935年、茨城県生まれ。いったん就職の後、明治学院大学文学部社会学科福祉コース卒業。子育てをしながら独学で油絵を描きはじめる。武蔵野美術短期大学美術科(通信教育)卒業。個展を中心に活躍。無所属。
*2大倉宏(おおくらひろし)
1957 年、新潟県生れ。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。1985~1990年、新潟市美術館学芸員。以後フリーとして、新潟を拠点に美術評論を 行う。著書に『東京ノイズ』(アートヴィレッジ 2004)、共著に『越佐の埋み火』(新潟日報事業社 1996)、編集・構成に『洲之内徹の風景』(春秋社 1996)。現在(2007年10月)、新潟絵屋代表、砂丘館館長。