『四竈公子展 ―館蔵品を中心に―』
はじまりました。
四竈公子さんの作品の題材は、普段なにげなく目にするものばかりです。
しかし、いわゆる「絵になる」はなやかな盛りの花や熟れた実を描くのではなく、枯れたり萎んだりした様子を絵にしておられます。先ず、そこに驚きがあるわけですが、ひとつひとつの作品にじっくり向かいあうと、塗り重ねられた絵の具の複雑な色合いの美しさ、不思議な構図のおもしろさに惹きつけられます。そして、何か特別な「物語の気配」があって、いったん目があうと離れがたい気持ちにさせられます。
『石畳II(上野地下道)』で描かれているのは、ずれたり汚れたり、時の経過が感じられる石の敷きつめられた舗道です。ある一部分が照射され、周囲はぼんやりとして暗がりに沈む画面から、一心に足元を見おろしている人物が想像されます。その人の身の丈を思いながら、独特の浮遊感に包まれる味わい深い作品です。
今回の展示は館蔵品を中心にすえ、四竈さんご自身が手元に置いて大切にされてきた作品も数点お借りして並べました。わたしどものコレクションは、四竈さんがかつて定期的に開いていた個展の度に、少しずつ集めてきたもので、もともとは自室に飾ってひそやかに眺める、暮らしとともにあった絵がほとんどです。
1998年と2005年に当館で開催した展覧会では、所蔵家の皆さんからお借りした作品が半数を占め、二階の展示室も含め約100点を展示する大規模なものでした。くらべて今回は、随分こぢんまりとしたものに感じられるかもしれません。しかし、第一展示室をぐるりと行きつ戻りつ、ゆっくりとご覧になるにはちょうど良い加減ではないでしょうか。作品と対話しながら、ご覧いただければ幸いです。
四竈 公子(しかま きみこ) 略歴
1935年 茨城県生まれ。
子どもの頃から、絵を描くことに親しむ。
高校在学中、下北沢ナザレン教会で洗礼を受ける。
絵の道への思いを抱きつつも、
家庭の事情から美大進学を諦め出版社に勤務。
医療奉仕の手伝いをするうちに福祉の重要性を認識、
明治学院大学文学部社会学科社会福祉コースに入学。
30代になって油絵をはじめ
42歳で武蔵野美術短期大学美術科を卒業。
1984年 銀座ギャラリータカノで個展開催(2000年まで)
団体に属さず、個展のみで作品を発表。
1998年 画集刊行。
フィリア美術館で特別展開催は、1998年、2005年につづき三回目。
〈近年の展覧会〉
2010年 梅野記念絵画館(長野県東御市)
2010年 すどう美術館(神奈川県小田原市)
2009年 砂丘館(新潟県新潟市)
八ヶ岳南麓の春の息吹とともに、四竈公子さんの作品世界をお楽しみください。
『四竈公子展 ―館蔵品を中心に―』
展示期間:2015年4月18日~6月30日
開館時間:午前9時30分~午後5時
休館日:水曜日 ※ 5/6(水)開館、5/7(木)休館
入館料:一般500円/小中学生300円
常設展示:ケーテ・コルヴィッツ/ミエチスラフ・コシチエルニアク
収蔵作品からのセレクト展示:スタシス/ウィルコン/ガウダシンスカ 等
タグ: ケーテ・コルヴィッツ, コシチェルニアク, 企画展, 休館日, 四竃公子, 油彩, 絵本
カテゴリー: 収蔵作品, 展覧会