イエス・キリストが処刑される前夜に、12人の弟子たちと囲んだ夕食の場面を描いた『最後の晩餐(さいごのばんさん)』。
数々ある『最後の晩餐』を主題とした作品のなかでもレオナルド・ダ・ヴィンチによるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁画が有名ですね。横長の大きな画面に、キリストを中心に左右一列に並んだ弟子たち。劇的に描かれた仕草から、それぞれの心情や背景を読みとりたくなります。
一方、ただいまフィリア美術館で展示している渡辺禎雄の『最後の晩餐』。3バージョン展示していますが、どの作品もキリストと弟子たちが四角い食卓をぐるりと囲む様子を上から俯瞰した構図です。つまり画面の中心は、テーブルの上のお料理になります。
もちろん渡辺の『最後の晩餐』にも、キリストはじめユダやヨハネなど12使徒それぞれ個性が描写されています。しかし、‘鯛の尾頭付き’や‘お寿司’という注目すべきメニューと言うこともあり、どうしてもお皿の上が気になってしまいますね。とくに下の写真の小品は極端に省略・単純化されているせいか、鯛の尾頭付きは最重要人物かのような存在感があります。
渡辺は多くの『最後の晩餐』をモチーフとした作品を制作しましたが、いつも食卓のメニューはお寿司や鯛の尾頭付きなどの和食でした。ダ・ヴィンチの晩餐のメニューは魚料理だそうですが、あまり記憶に残っていませんね・・・。
この記事には掲載していない1990年制作の『最後の晩餐』にも、なかなか大きな顔をした鯛が描かれていますよ。
ぜひ実際にご覧になって見くらべてみてくださいね。