2009 年 8 月 のアーカイブ

  
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8月15日

2009 年 8 月 15 日 土曜日

今日は終戦の日。太平洋戦争が終わって64年の時が経ちました。

第2展示室で常設展示しているドイツの画家ケーテ・コルヴィッツ(Käthe Schmidt Kollwitz / 1867年7月8日-1945年4月22日)は、第一次大戦で息子を、第二次大戦では孫を戦死させてしまった悲しみを抱えつつ、戦争のありようを版画や彫刻などの作品にし続けました。代表作『ピエタ』は、死んだ息子を静かに抱く母の像であり、義勇兵として志願し戦死した息子ペーターへの哀悼とその克服がテーマとなっています。

『ピエタ(Pietà)』(ブロンズ彫刻作品 1936年:当館収蔵)

『ピエタ(Pietà)』(ブロンズ彫刻作品 1936年:当館収蔵)

1945年5月8日にドイツは終戦を迎えますが、切望したその日を待たずに彼女は亡くなりました。常に戦争が生活の傍らにあり、ヒットラー政権下は芸術院会員の地位を追われアトリエを奪われ自由な表現活動を制限されるなど、苦難に満ちた日々を送らざるをえなかったケーテ。
しかし
彼女は未来の平和を信じ続けていました。
晩年ケーテが孫娘ユッタに語った言葉を紹介させていただきます。

・・・戦争がなくなったとしても、誰かがそれをまた発明するかもしれません。今まで長い間そうやってきたように。しかしいつかは新しい思想が生まれるでしょう。そして一切の戦争を根絶やしにするでしょう。  ・・・このような確信のうちに私は死にます。そのためには、人は非常な努力を払わねばなりません。 ・・・平和主義を単なる反戦と考えてはなりません。それは一つの新しい思想、人類を同胞としてみる理想なのです。

フィリア美術館が、誰かの思いや存在にゆっくり目をこらし耳を澄ます場となりますよう、またそこから芽生えた気持ちを静かに味わう場となりますよう、ケーテの言う「新しい思想」をうみだす場のひとつとなりますよう願っています。
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『ケーテ・コルヴィッツの日記 − 種子を粉に轢くな − 』(アートダイジェスト刊 2003年 鈴木東民・訳)から引用抜粋

せっせっせーのよいよいよいっ

2009 年 8 月 14 日 金曜日

アンキさん*1の作品に、蓄音機の傍らで直立して歌っている『自画像』(多色木版 1932年)があります。
両手をお腹に、口を縦に大きく開けて朗々と・・・、といった様子ですが
さて、どんな歌をうたっているのでしょうか・・・。

絵葉書を額装してみました。オリジナルは展示中ですよ。

絵葉書を額装してみました。オリジナルは展示中ですよ。

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ところで
様々な書物からアンキさんの人となりを知るにつけ、思い出される歌があります。

お寺のおしょうさんが
かぼちゃの種を まきました
芽がでて ふくらんで
花が咲いたら
ジャンケンポンッ

という遊び歌です。
(二人一組で向かいあって、お互いの手を打ち鳴らしながら歌います。「芽がでて」以降は両手を祈るようにあわせ、種から花へと変化する振り付けがあり、最後にジャンケンの勝負!という遊びです。歌詞は地方によって時代によって、かぼちゃは花を咲かせた後、枯れたり実をつけたり転がったり・・・といういろんなバージョンもあるようですが、上の五行がだいたい基本となります)

アンキさんの生家はお寺と縁が深く、彼は仏教系の中学校へ通っていました。
また、手作りの掘っ立て小屋で暮らした最晩年には、飢えをしのごうとかぼちゃの種をまいて育てていました。
八坂喜代さん*2 のお話によると、アンキさんは毎日毎日かぼちゃ畑に座り小さく結んだ実をニコニコと嬉しそうに数えては、かぼちゃの実が熟れる9月を心待ちにしていたのだそうです。「これからは草ばかり食べずにすみます。もう大丈夫です。」 しかし、そのかぼちゃを口にすることなく、1946年9月9日、栄養失調のために衰弱死しました。(太宰治の「桜桃忌」のように、アンキさんの命日の9月9日は「かぼちゃ忌」と呼ばれたりもしているとか・・・)。

かぼちゃの花

かぼちゃの花

いま、小淵沢周辺の畑では、かぼちゃの黄色い花が咲いているのを見かけます。
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ちょうど実が熟れる頃、アンキさんの作品に囲まれながら、酒井俊さんがさまざまな歌をうたってくださいます(9/27 LIVE! 酒井俊)。こちらもお楽しみに!
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*1 アンキさんとは、谷中安規(たになかやすのり 1897-1946) のことです。勝手ながら親しみを込めて呼ばせていただいております。

*2 八坂(旧姓 佐瀬)喜 代さんは、アンキさんの最期を看取った方です。このときの様子は、先月発売された『谷中安規の事』( 八坂喜代・著 限定1,000部発行 たけしま出版 )に詳しく書かれています。八坂さんには、フィリア美術館のイベント『ギャラリートーク 谷中安規をめぐって』でも、たくさんの貴重なお話を聞かせていただきました。

呼んでる口笛 百舌の声

2009 年 8 月 11 日 火曜日

今日は久々にお日様がきらきらぎらぎら照りましたね。
昼下がり、来館者が途切れた合間にベランダに出てちょっと一息。
さわやかな夏空を見上げていたら、美術館のそばにそびえるモミの木のてっぺん近くでたわむれる小鳥の姿が目に入ってきました。

モミの木に鳥の姿が・・・

モミの木に鳥の姿が・・・

つがいのようですね

つがいのようですね

肉眼ではどんな鳥なのかよく見えませんし、飛び方で区別できるほど野鳥に詳しくありません。よくわからないながらもとにかくカメラで撮ってみました。パシャリパシャリ。

アップにしてみました

アップで見てみると・・・

拡大してみたら・・・ モズかな?
羽の色や、眉毛部分の白、目の下のラインの暗褐色などから判断しましたよ。
その瞬間、反射的に

目かくし鬼さん  手の鳴る方へ
澄ました  お耳に  かすかに沁みた
呼んでる口笛  百舌(もず)の声・・・
(作詞:サトウハチロー  作曲:中田喜直)

と、思わず口ずさんでいる自分を見つけました。
ようやく長雨から解放されて夏空気分を味わっていたのに『ちいさい秋 みつけた』???
少しさみしい気持ちになってしまいましたけど大丈夫、本格的な夏はこれからです!

  
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